【労働基準法】即時解雇する場合の解雇予告除外認定の手続き
2019年07月25日
労務相談事例
従業員を解雇する場合、解雇の合理的な理由が必要であることは当然のこと、従業員の生活を保護するために解雇日の少なくとも30日前の予告を行うか、30日分以上の解雇予告手当を支払うことが必要です。
今回は、会社を14日以上無断欠勤した従業員を懲戒解雇により即時解雇したい、かつ、解雇予告手当も支払いたくないという相談です。
この会社の就業規則の懲戒解雇の条項は、「14日以上無断欠勤した場合」が明記されており、懲戒解雇自体は問題ありません。30日前の解雇予告あるいは解雇予告手当の支払いをしないで即時解雇する場合、労働基準監督署の「解雇予告除外認定」という制度があります。この認定を受けることで30日前の解雇予告あるいは解雇予告手当の支払いをしないで即時解雇することができます。
- 従業員を懲戒解雇する場合でも30日前の解雇予告か解雇予告手当の支払は必要でしょうか。無断欠勤しており、会社も迷惑しているのですが。
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労働基準法第20条では合理的な解雇であっても、解雇日の少なくとも30日前の予告を行うか、あるいは30日分以上の解雇予告手当を支払うことが必要とされています。これは懲戒解雇であっても適用されます。懲戒解雇であっても解雇日の少なくとも30日前の予告を行うか、あるいは30日分以上の解雇予告手当を支払うことが必要です。
したがって、懲戒解雇による即時解雇を行うのであれば30日分の解雇予告手当を支払う必要があります。ただし、労働基準監督署による「解雇予告除外認定」を受けることができれば、30日前の解雇予告や解雇予告手当を支払うことなく即時解雇ができます。
- 労働基準監督署の「解雇予告手当除外認定」とはどのような手続きですか。
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下記の事由があれば、原則として解雇通知を行う前に、労働基準監督署の認定(解雇予告手当除外認定)を受けることで30日前の解雇予告や解雇予告手当の支払いが不要となり、即時解雇することができます。
(1)天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
(2)労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合上記(2)の労働者の責に帰すべき事由として認定すべき事例として下記の事例が公表されています(昭23.11.11 基発1637、昭31.3.1 基発111)。
①原則として極めて軽微なものを除き、事業場内における盗取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為があった場合
②賭博、風紀紊乱等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合
③雇入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合および雇入れの際、使用者の行う調査に対し、不採用の原因となるような経歴を詐称した場合
④他の事業場へ転職した場合
⑤原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
⑥出勤不良または出欠常ならず、数回にわたって注意を受けても改めない場合今回のケースは上記⑤に該当するため、即時解雇したい場合は労働基準監督署に解雇予告除外認定を受けることで、30日前解雇予告や解雇予告手当の支払いは不要となります。
解雇予告除外認定の申請書は様式第2号と様式第3号があり、2号が上記(1)のときに使用する様式、3号が上記(2)のときに使用する様式になります。
- 労働基準監督署の解雇予告除外認定は、従業員に解雇通知する前に認定を受けなければならないのでしょうか。また、解雇予告除外認定を申請をしてから認定されるまでにどのくらい日数がかかりますか。
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解雇予告除外認定は、原則として従業員に解雇を通知する前までに受けておくことが望ましいですが、懲戒解雇により即時解雇の意思表示をした後、解雇予告除外認定を受けた場合、その効力は使用者が即時解雇の意思表示をした日にさかのぼって発生するという行政通達(昭63.3.14 基発150・婦発47)があります。したがって、即時解雇を通知した後、事後的に認定を受けても問題ないと考えられます。ただし、労働基準監督署によっては解雇後に事後的に認定申請をした場合には受理しないケースもあるようです。
労働基準監督署は解雇予告除外認定の申請を受理した場合、労働者から意見聴取し、事実確認を行います。労働者が意見聴取に協力的かどうかにもよりますが、認定されるまで2週間前後かかります。
- 労働基準監督署から解雇予告除外認定を受けられなかった場合、解雇は無効になりますか。
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労働基準監督署の解雇予告除外認定は、解雇が有効か無効かを判定されるものではないため、認定を受けられなかったことにより解雇が無効になるわけではありません。
ただし、30日前の解雇予告あるいは解雇予告手当の支払が必要となります。即時解雇していれば労働者から解雇予告手当の支払を要求された場合、支払わなければなりません。