【譲渡所得税】賃貸不動産を売却した場合の減価償却費の計算の有利選択

2018年02月28日

税法相談事例

 今年の確定申告では、不動産の譲渡所得で利益を出している方が非常に多いです。個人的にも相談を受けたら売却していったん利益確定するようアドバイスしていましたから。

 賃貸用不動産を売却した場合、不動産所得は総合課税として給与所得などと合算し、超過累進税率により課税されますが、譲渡所得は分離課税で、短期譲渡だと所得税・住民税合わせて39%(復興特別所得税は別途)、長期譲渡だと20%(復興特別所得税は別途)で課税されます。

 今回の確定申告のポイントは、RCの1棟マンションを売却し、短期譲渡による売却益が多額に生じる方で、不動産の減価償却費を売却までの月割分を不動産所得の必要経費に計上するかどうかです。

 個人の減価償却はいわゆる「強制償却」とされており、償却するかどうか任意選択ではありません。したがって、年の中途で不動産を売却した場合でも所有していた月数分は減価償却しなければならないと思っている方が非常に多いです。

8月に賃貸用不動産を売却しました。期首簿価は2億円、8月までの月割の減価償却費は2,000万円です。この減価償却費2,000万円は不動産所得の必要経費に計上する一方で、譲渡所得の計算における取得費は償却後簿価である1億8,000万円になるのでしょうか?短期譲渡に該当し、税率が高いため、減価償却しないで譲渡所得の計算における取得費を期首簿価の2億円とすることはできないでしょうか?
 個人の減価償却について、年の中途で譲渡した場合の取扱いが、所基通49-54で定められています。
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(年の中途で譲渡した減価償却資産の償却費の計算)
49-54 年の中途において、一の減価償却資産について譲渡があった場合におけるその年の当該減価償却資産の償却費の額については、当該譲渡の時における償却費の額を譲渡所得の金額の計算上控除する取得費に含めないで、その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入しても差し支えないものとする。(平13課個2-30、課資3-3、課法8-9追加)
(注) 当該減価償却資産が令第6条第1号、第2号及び第8号に掲げる建物及びその附属設備、構築物及び無形固定資産である場合には、当該償却費の額について譲渡所得の金額の計算上控除する取得費に含める場合とその年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する場合では、事業税における所得の計算上の取扱いが異なる場合があることに留意する。
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 譲渡した月までの減価償却費については、(1)不動産所得や事業所得の必要経費に計上する方法、(2)不動産所得や事業所得の必要経費に計上しないで、譲渡所得の計算における取得費に含める(つまり、償却前の簿価を取得費とする)方法のいずれかを納税者が選択することができます。

 個人の減価償却方法が「強制償却」だからといって月割分の減価償却費を不動産所得や事業所得に必ず計上しなければならないというわけではありません。

 今回は短期譲渡であるため、減価償却費を不動産所得の必要経費に計上しないで、償却前の簿価を譲渡所得の計算における取得費とした方が所得税、住民税が200万円ぐらい少なくなりました。