【法人税】法人住民税の均等割りを節税するための無償減資

2017年08月25日

税法相談事例

 平成27年度税制改正により、法人住民税の均等割の税率区分の基準となる資本金等の額について改正があり、平成27年4月1日以後に開始する事業年度からは改正後の規定が適用されます。

 均等割とは、赤字の場合であっても道府県、市区町村に対して納付しなければならない税金です。その額は「資本金等の額」で決まり、資本金等の額が多ければ均等割りも増える構造になっています。
 
 改正前は、「資本金等の額」は法人税法で規定する資本金等の額と規定されていました。

 例えば、会計上の資本金1億円、利益剰余金▲5000万円の法人が、欠損を補てんする目的で無償減資を5000万円行った場合、
 (仕訳)資本金/利益剰余金  5000万円
となり、会計上の資本金は5000万円、利益剰余金はゼロとなります。

 会計上の資本金が減少したため均等割も軽減されるかというと、法人税法では、会計上減少した資本金の額は資本金等の額として加算することになり、無償減資の前後で資本金等の額に変動はありません。つまり、法人税法の資本金等の額は1億円のままということになり、無償減資を行っても均等割は軽減されませんでした。

平成27年度税制改正で均等割りを決定する際の「資本金等の額」にどのような改正が行われたか教えて下さい
 平成27年度税制改正で、下記の1または2のいずれか大きい額で均等割を判定することになりました。
1.「資本金等の額」+「無償増資額(※1)」-「無償減資による欠損填補額(※2)」
2.「資本金」+「資本準備金」

(1) 無償増減資等の調整(※1)(※2)
 均等割の額を判定する際の資本金等の額について、無償増減資等の金額を加減算することとなりました。
 具体的には、
●無償増資・・・平成22年4月1日以後、利益準備金又はその他利益剰余金による無償増資を行った場合、その増資額を加算します

●無償減資・・・
①平成13年4月1日から平成18年4月30日までの間に無償減資による欠損のてん補を行った場合及び資本準備金による欠損のてん補を行った場合、その欠損のてん補に充てた金額を減算します
②平成18年5月1日以後に剰余金による損失のてん補を行った場合(資本金の額又は資本準備金の額を減少し、その他資本剰余金として計上してから1年以内に損失のてん補に充てた金額に限る)、その損失のてん補に充てた金額を減算します

(2) 資本金と資本準備金の合計額との比較
 上記(1)で計算した資本金等の額が、会社法上の資本金及び資本準備金の合計額に満たない場合、資本金及び資本準備金の合計額が資本金等の額となります。
 法人税法上の資本金等の額は、自己株式の買取りや組織再編等によりマイナスになることがあります。今回の改正により、法人税法上の資本金等の額と会社法上の資本金及び資本準備金の合計額とのいずれか高い方で均等割を決定することになりました。

 今回の改正により無償減資をすることで均等割の額を下げることが可能になりました。均等割を判断する資本金等の額は、決算日時点の金額で判定します。一方、無償増資については資本金等の額に加算する調整が要求されるようになったため注意が必要です。