【相続税】家賃収入を確定申告していない場合の貸家、貸家建付地評価減の適用

2015年07月19日

税法相談事例

 相続税申告を相当数経験すると、いろんなケースに遭遇します。今回の相続税申告の問題は、相続財産の中に、戸建住宅が4件あり、第三者に賃貸しているものがあるが、家賃収入が年間で少額だということもあり、不動産所得として確定申告していないという点です。

 確定申告していれば、次のような相続税の計算上、相続税額を軽減する制度を適用することができます。
 1.家屋の評価にあたり、借家権(30%)を控除できる
 2.土地の評価にあたり、貸家建付地として借地権割合(60%)×借家権(30%)=18%を控除できる
 3.小規模宅地等の減額の適用により、土地の評価をさらに50%(200㎡を上限)引き下げることができる

 家賃収入を確定申告していれば何ら問題なく上記の適用が認められます。
しかし、確定申告をしていないケースも散見され、このような場合には相続税申告にあたって問題が表面化します。

家賃収入をこれまで確定申告していませんでしたが、相続税申告で貸家や貸家建付地として評価減を受けたいですし、小規模宅地等の減額も受け、相続税を少しでも減らしたいです。どのように対処すればいいでしょうか。
相続税の税務調査では相続税の申告内容と確定申告の内容で整合性がとれない部分の確認作業が行われます。ご質問のように、相続税申告では不動産賃貸しているということで貸家や貸家建付地として評価減を受けたり、小規模宅地等の減額を適用しているにもかかわらず、家賃収入を確定申告していないケースなどです。

 これらの適用を受けるためには、過去の家賃収入を確定(期限後、修正)申告する必要があります。過去何年分の申告をすればいいのかというと、平成23年税制改正により、更正の請求期間が5年に改正され、これに合わせて税務署の更正期間も5年となったことから、基本的には5年分の申告が必要と考えます。

 さらに過年度分の所得税の確定申告をすることが、多くのものに影響が出ます。
(1)過年度の所得税額の債務控除
 過年度の確定申告を行い、その納税額は債務控除の対象となります。これらの申告に伴う延滞税や加算税等も債務控除が可能となります。ただし、準確定申告に係る延滞税や加算税は債務控除できないので注意が必要です。
(2)過年度の住民税の追徴課税
 過年度の住民税も追徴課税されます。当然にこれも被相続人の公租公課のため債務控除できます。
(3)過年度の健康保険の追徴課税
 所得が増加することにより、過年度の健康保険料が追徴課税されます。これも債務控除できます。また、高額療養費として還付を受けた医療費があれば、所得が増加することで再計算され、返戻する必要がある場合もあります。

 過去の家賃収入を確定申告していない理由が受け取った家賃が少額であるということであれば、過年度分の申告を遡って提出しても、上記の影響が軽微でしょうし、相続税の負担軽減の効果の方が高くなるでしょう。