【贈与税】離婚した父親の住宅ローンを子供が返済する場合-負担付贈与と相続時精算課税の活用

2015年02月06日

税法相談事例

両親が離婚した際、父親名義の自宅に住宅ローンが残っていて、母親名義に変更することができないケースがあります。母と子がその自宅に住み続けていて、父親が住宅ローンを遅延なく返済していれば問題ないですが、父親が返済を遅延してしまうと金融機関はその自宅を差し押さえます。

今回の相談は、父親が住宅ローンの返済を遅延し、金融機関が差し押さえしようとしていましたが、子供が住宅ローンを一括返済する代わりに自宅の名義を父親から自分に変えたいという内容です。心配されているのは贈与に当たるのではという点です。

離婚した父親の住宅ローン1,000万円を肩代わりする代わりに父親名後の自宅3,000万円を自分の名義にしたいのですが、贈与に当たるのでしょうか。
父親が資力を喪失している状態であれば子供が父親の住宅ローンを弁済しても父親に贈与したものとして贈与税が課税されることはありません。ただし、自宅の名義を単純に贈与で変更すると贈与税の課税対象になります。この場合、贈与税は1,220万円にもなってしまいます。住宅ローン1,000万円と贈与税1,220万円の合計2,220万円を負担しなければなりません。

今回のケースは、「負担付贈与」と「相続時精算課税制度」を活用することで贈与税はゼロにすることができます。

負担付贈与とは、受贈者に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与のことをいいます。負担付贈与を受けた場合、贈与税は贈与財産の価額から負担額を控除した価額に対して課税されます。贈与財産の価額は、贈与財産が不動産である場合は相続税評価額を使うことはできず、いわゆる時価を使うことに注意が必要です。

ご相談の件で住宅ローン1,000万円を負担するという条件付きで自宅3,000万円を贈与するという負担付贈与にすることで、贈与税の課税対象は、3,000万円-1,000万円=2,000万円に下がります。

次に父親から子供に対する贈与として相続時精算課税制度を適用します。相続時精算課税は、控除額が2,500万円あり、2,500万円以内の贈与であれば贈与税は非課税です。したがって、ご相談の件は相続時精算課税を活用することで贈与税ゼロとなります。

相続時精算課税制度は、生前贈与時に2,500万円以内の贈与であれば非課税ということで税金の負担がなく財産移転することができますが、贈与者が死亡したときに相続財産として持ち戻しされ、相続税の課税対象になる点に注意が必要です。

また、負担付贈与の場合、贈与者(父親)側に譲渡所得税の課税問題が生じます。負担付贈与は、贈与者の資産が移転されるとともに贈与者の債務が消滅するために、贈与者は債務の消滅という経済的利益を得ることになります。この経済的利益が譲渡の対価の金額として譲渡所得の収入金額になります。この収入金額から取得費を控除し、譲渡益が生じる場合は譲渡所得税が課税されます。